まろやかと酸化のバランス、ラヴノーのシャブリは無敵
- 2015/11/18
- 00:55

ジャン・マリー・ラヴノーには伝説がある。訪問は極めて困難。電話で連絡がとれず、FAXしか通じない。少なくとも通信状況は改善されたようだ。オフィスにはパソコンがあった。ドメーヌを訪問したら、クリストフ・ルーミエがメールを書いているような時代だから、不思議はない。 2015は収穫直前の9月1日にヒョウ害に見舞われた。ラヴノーも80%が被害を受けた。「9月3日に予定していた収穫を1日に繰り上げた。酸が足りない」と、...
マイクロ・ネゴスのオリヴィエ・バーンスタイン、古木のグランクリュを買える理由
- 2015/11/17
- 00:16

ブルゴーニュのグランクリュの畑は小さい。栽培農家の持ち分は少ない。にもかかわらず、マイクロ・ネゴシアンはブドウを手に入れる。ルシアン・ル・モワンヌ、フィリップ・パカレ、バンジャマン・ルルー、そして、オリヴィエ・バーンスタイン。 どうやって、優れた畑のブドウを手に入れるのか? その謎が、オリヴィエと話しているうちに少し解けた。収穫前にプレミアムを乗せて支払って、樹齢の高い畑のブドウを確保してしまう...
記念碑的なシャンベルタン、オリヴィエ・バーンスタインの2014
- 2015/11/16
- 01:05

一方通行だらけのボーヌの小道をくぐり抜けて、小さなメゾンに着いた。荒廃していた15世紀の館を改修中。マイクロ・ネゴシアンという理由がよくわかった。小さな発酵槽が数基あるだけ。スタッフは3人。熟成中の樽も少ないが、アペラシオンはキラ星のごとく。ヴィラージュ1、プルミエクリュ3、グランクリュ7。樽から試飲した2014は、驚くほど水準が高い。2007から始め、2013が最高かと思っていたが、さらに上を行く。 ジュブレ・...
CEOだから言える、「クリュッグをごちそうしてあげて」
- 2015/11/14
- 01:52

現地で飲むワインはおいしいと言われる。日本のインポーターは輸送に気を使うから、大きく違うはずはない。それなのに、クリュッグの6代目当主オリヴィエ・クリュッグはこう言っていた。 「メゾンのものと自宅の冷蔵庫のものでは味が違う。ニューヨークで飲むものならなおさらだ」 シャンパーニュは、紫外線や温度の影響を最も受けやすい。ブレンドして造り上げたテイスターにしてみれば、微妙な味わいの違いを感じるのだろう...
わずか3樽ロマネ・サン・ヴィヴァン、シルヴァン・カティアールの飲む宝石
- 2015/11/13
- 00:48

世代交替に伴って、ブルゴーニュのワインはエレガントに変化している。ビオに取り組み、抽出は優しく、全房発酵も取り入れ、新樽比率を下げている。シルヴァン・カティアールはその流れに乗り始めたばかりだ。 31歳のセバスチャンは、父シルヴァンが引退した2013年の2年前から、栽培と醸造を担当している。2014年から化学薬品の使用を止めた。新樽比率はグランクリュで50%、それ以外は30%に減らした。すべて除梗している。抽...
地上で最も知的なワイン、ヴォギュエのミュジニーVV
- 2015/11/11
- 00:58

ヴォギュエ訪問は試練だ。醸造責任者フランソワ・ミエ氏の詩的なコメントをどう解釈するか。ワインの本質にどこまで近づけるか。接近しないと見えないが、近寄りすぎても全体像が見えない。ミュジニーVVのように。 彼は樽で眠る2014と2013の違いをこう表現する。 「2013は冬の美しさ。2014は空気が温まりかけた春だ。2013はベリー・ミネラル。2014は果皮が熟して、開放的。2015はさしずめ夏だね(微笑)」 シャンボル・ミュジ...
プレモックス対策と区画別醸造、エレガントに進化するジャック・プリウール
- 2015/11/10
- 01:44

ジャック・プリウールは、ブルゴーニュ純血主義者にはピンとこないかもしれない。ボージョレから始まり、プリウールを買収し、ポムロールのルジェとシャンパーニュにもメゾンを展開する。当主エドゥアール・ラブリュイエール氏は、だが、ただの裕福な実業家ではない。女性醸造家ナディーヌ・ギュブランばかり目立つが、ワイン造りを職人的に追及している。 2013のピュリニー・モンラッシェのプルミエクリュ、レ・コンベットを瓶...
最良の「飲むミネラル」、シャブリでラヴノー三昧
- 2015/11/07
- 17:25

この夜、熟成したラヴノーのシャブリを地上で最も飲んでいたのは、我々のテーブルだったかもしれない。大橋健一MWと一緒にドメーヌを訪れた後、近くのオステルリー・デ・クロのレストランで、3本を開けた。畑違いのちょっとした垂直試飲である。 プルミエクリュのビュトー2002、モンテ・ド・トネール1999、グランクリュのレ・クロ2003。いずれも市場にはない。値段は現行ヴィンテージより安い。この夜のハイライトはグランクリ...
ガンコオヤジの造るエレガンス、ドメーヌ・デ・ランブレイ
- 2015/11/06
- 16:14

一発で人柄に魅了され、仲良くなれる。色々なタイプの造り手がいるが、ドメーヌ・デ・ランブレイのティリー・ブルーアン氏はそんな男だ。実直な農民。でも、造るワインはこのうえなくエレガント。 11月は多数の評論家やバイヤーがブルゴーニュを訪れる。ランブレイ訪問は外せない。この日の朝はクリスティーズのアンソニー・ハンソンが訪ね、翌日はBB&Rのジャスパー・モリスMWが来るという。おかげで、少量生産品や古いヴィン...
全房でエレガントに進化、メオ・カミュゼのヴォーヌ・ロマネ・クロ・パラントゥ
- 2015/11/05
- 14:43

メオ・カミュゼはアンリ・ジャイエの「弟子」とみられがちだが、忠実な弟子とは違う。1989年にパリからヴォーヌ・ロマネ村にやってきたジャン・ニコラ・メオがジャイエのコンサルタントを受けていたのは1998年まで。ジャン・ニコラは90年代半ばから、抽出の強いスタイルに移行した。 ジャイエの信条だった除梗についても、近年は変化がみられる。2004年を手始めに、2009年、2010年と全房発酵にトライしてきた。2011年以降は、ニ...
ピュアで透明な全房発酵、若手スターのダヴィド・デュバン
- 2015/11/04
- 16:10

「ヴィノス」の評論家アントニオ・ガッローニ氏は、熟成中の2014を試飲して「全房発酵しているとは思えない」と語ったそうだ。私もそのエレガンスに舌を巻いた。茎っぽさは目立たない。スパイシーな複雑さが加わり、透明感ある果実となめらかな質感は変わらない。 1971年生まれのダヴィド・デュバン氏は若手生産者のホープだ。ガイド本「レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス 2015」で3つ星を得た理由を納得した。標高400メー...
高密植度への挑戦、ユベール・ラミーの恐るべきサン・トーバン
- 2015/11/03
- 15:21

ブドウの樹の密植度を増すと、根が地下深くに伸び、養分吸い上げる。フランスの生産者がよく言う言葉だが、何が違うのか。それを実感できる機会は少ない。ブルゴーニュのサン・トーバンで気をはくユベール・ラミーでその違いを体験した。 サン・トーバンはピュリニー・モンラッシェの北西の谷づたいに広がる。時間が止まったような村だが、意欲的な造り手が多い。当主オリヴィエ・ラミーは1990年ごろから、畑の密植度を増やす実...