右岸ビオの先駆、熟成待ちたいシャトー・フォンロック2010
- 2016/10/08
- 02:17

ボルドー左岸でビオが広がっている。ポンテ・カネやギローはビオディナミの認証を得た格付けシャトーとして知られ、パルメも2017年の認証を目指している。だが、ビオの動きで先駆けたのは右岸だ。コート・ド・ボルドーのシャトー・ル・ピュイは農薬を長らく使わず、1990年に酸化防止剤の添加を止めた。ポンテ・カネのチームが、ジャン・ピエール&パスカル・アモリュー親子に、ビオディナミやワイン醸造の教えを請うたのは、あま...
ネゴス的なイングリッシュ・スパークリング、ディグビーの冷涼感とマロのバランス
- 2016/10/04
- 00:55

シャンパーニュがスパークリングワインの頂点に立つのは、リソースが豊かだからだ。多彩な畑があり、リザーヴワインの蓄積も豊富にある。ブレンドの自由度が、歴史の浅い産地より大きい。イングリッシュ・スパークリングが、ブラインド試飲でシャンパーニュに勝つ例が出ているが、総合力では追い付いていない。 そんな中で、ディグビーは興味深い挑戦をしている。ノンヴィンテージを生産し、複数の産地のブドウをブレンドしてい...
南ア・エルギンのクールネス、時代にフィットしたリチャード・カーショーMWのシャルドネ
- 2016/09/22
- 01:38

マスター・オブ・ワイン(MW)の造るワインに外れはない。オーストラリアやニュージーランドから産する多くのワインを飲むたびにそう思う。基礎知識だけでなく、世界の潮流に通じていて、ち密なスタイルに仕上げる。資質的には、世界を飛び回る醸造コンサルタントと似ているが、MWが造る場合は本人がすべての過程を煮詰めている。栽培適地を探しだし、クローンや仕立てを考え、適切な醸造・育成を施す。論理的に構築され、時代が...
熟成してもフレッシュ、ルーウィンのアートシリーズ・シャルドネ
- 2016/09/20
- 08:00

ルーウィン・エステートがオーストラリア南西端にあるマーガレット・リヴァーを有名にした。アーティストラベル、ワイナリーで開くコンサートなどトータルで、ワイナリーと産地のイメージを高めた。創設者のデニス・ホーガンが、ロバート・モンダヴィから助言を受けたマーケティングも取り入れ発展してきた。 デニスと長女シモーヌが来日し、フラッグシップのアート・シリーズの古いヴィンテージを試飲した。10年以上寝かせたオ...
ニュージーランドの優良ワイン、サム・ハロップ&大橋健一MWと試飲
- 2016/09/18
- 15:35

ニュージランドのマスター・オブ・ワイン(MW)ら専門家が、ニュージーランド航空のために選んだ「ファインワインズ・オブ・ニュージーランド・セレクション」を試飲する「ニュージーランド マスタークラス」が、2日、大阪で行われた。 講師はワイン選びを担当したサム・ハロップMWと、日本から大橋健一MW。ワインは国内で売り切れているものも多く、主催者の「小松屋」が輸入した。ニュージーランドは南北に長く、土壌は多様...
ミクロネゴス最前線、マーク・ハイズマ2014のピュアさとミネラル
- 2016/09/14
- 09:29

ブルゴーニュのミクロ・ネゴシアンに、オーストラリア出身のホープが何人か登場している。マーク・ハイズマはその筆頭だ。少量のロットを消費者に直接販売する。カリフォルニアのカルトワインのように、メーリングリストに頼っている。資金の少ないアウトサイダーが、閉鎖的なブルゴーニュでワインを造り始めるには一つの手法だろう。 ブルゴーニュの地価は高騰を続けている。2011年以降は、生産量も減少している。ミクロ・ネゴ...
米畑の個性表現する「根知」、2015年新酒の発表会
- 2016/09/09
- 09:34

新潟・糸魚川の根知谷から米畑の個性を表現する酒造りに取り組む渡辺酒造店が1日、2015年ヴィンテージの新酒発表会を開いた。 渡辺吉樹代表が豪雪地帯の根知谷で、急峻な山合いの日照や風向きを考慮しながら、米畑(ライス・フィールド)やヴィンテージの違いを表現している。2003年、米の栽培から仕込みまで自ら行う「ドメーヌ」体制に移行した。五百万石種と越淡麗種の有機栽培に取り組み、テロワールによって、異なる酒を仕...
テロワールは正直、ジャック・フレデリック・ミュニエのニュイ・サン・ジョルジュ・クロ・ド・ラ・マレシャル
- 2016/08/13
- 01:20

ニュイ・サン・ジョルジュからRN74を南下すると、プレモー・プリセが終わるころ、右側に看板が見える。「クロ・ド・ラ・マレシャル ジャック・フレデリック・ミュニエ」。9.76ヘクタールのモノポールは広い。ミュニエのミュジニーの9倍ある。 ブルゴーニュの特質が詰まった畑だ。フェルマージュ(賃借)、造り手によるスタイルの違い、テロワール。ミュニエ家は1902年からこの畑を所有するが、1950年から2003年まではフェヴレ...
蒸し暑い夏の食前に、ロルフ・ビンダーの甘酸っぱいクレア・ヴァレー・リースリング
- 2016/08/12
- 09:34

オーストラリアの魅力はシラーズばかりではない。早くから楽しめるお手ごろなリースリングは、今年のような蒸し暑い夏に欠かせない。 代表的な産地はサウス・オーストラリア州のクレア・ヴァレーとエデン・ヴァレーだ。バロッサ・ヴァレー、ウェスタン・オーストラリア州のグレート・サザンやタスマニアも興味深いが、クレア・ヴァレーとエデン・ヴァレーは1840年代からの歴史を有する。今でこそ、オーストラリアのシャルドネは...
ミスター・サンジョヴェーゼの入門編、フェルシナのキアンティ・クラッシコ
- 2016/08/11
- 00:34

イタリア・トスカーナには、大勢のエノロゴ(醸造家)が活躍している。カルロ・フェリーニ、フランコ・ベルナベイ、ニコラ・ダッフリット、ヴィットリオ・フィオーレ、ルーカ・ダットーマ、アルベルト・アントニーニ、リカルド・コッタレッラ……きりがないが、「ミスター・サンジョヴェーゼ」の名がふさわしいのは、フェリーニとベルナベイではないか。 ベルナベイの経歴を振り返ると、1978年のファットリア・ディ・セルヴァピア...
ブランド神話の復活、シャルル・エドシックの長期熟成NV
- 2016/08/10
- 10:20

メゾンのシャンパーニュ造りでは、企業の総合力が問われる。資金力、販売網、宣伝。どれも重要だ。お金がなければ、熟成期間を長くとれない。星付きレストランや高級ショップに常に在庫しなければ、ソムリエや消費者から忘れられる。醸造責任者やアンバサダーが主要な市場を巡回しないと、高いイメージを保てない。 日本でトップシェアを占めるブランドはそこがうまく回っている。クリュッグ、ドン・ペリニヨン、サロン、ベル・...
カルトとは反対のコリソン、女性ワインメーカーの先駆が造るナパのカベルネ
- 2016/08/09
- 01:59

キャシー・コリソンは、ハイディ・バレットやヘレン・ターリーらと並ぶ女性ワインメーカーの先駆けだ。UCデイヴィスの同級に女性は彼女だけだった。卒業したのが1978年。シャペレット、スタグリンなどでワインメーカーを務めて頭角を現す一方で、87年に自らのブランドを築いた。バレットの卒業が80年。ターリーがBRコーンで初のワインメーカーになったのが84年。ほぼ同世代だが、2人ほど広く知られていない。 数々のカルトワイ...
不可能を可能にしたモエ・ヘネシーの赤ワイン、シャングリラで生れるAo Yun
- 2016/08/06
- 03:22

中国は消費・生産ともに大国になったが、生産国としては遅れをとっている。そのイメージを変えるのがこの「Ao Yun」(アオ・ユン)だ。チベット自治区に近い雲南省北部のヒマラヤ山脈のふもとから生まれる。 ここ1、2年で最も注目を集めたアジア発のワインと言っていいだろう。モエ・ヘネシー・エステーツ&ワインズがアジアで最高のワイン造りを目指して、2009年に始めた。ジャンシス・ロビンソンMWやデカンター誌のジェーン...
驚くべきラス・カーズのサードワイン、テール・デュ・リオン2001
- 2016/08/04
- 01:00

ボルドーワインの選別の重要性は言うまでもない。グランヴァンの質を高めるには、セカンドワインやサードワインを詰める必要がある。とはいえ、自社畑のブドウのみでサードワインを詰めている例は少ない。1級でもラトゥールとマルゴーだけだろう。 そう考えると、2級なのにサードワインを詰めている「シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ」が、どれだけ品質にこだわっているかわかる。「グランヴァン・ド・レオヴィル・デュ・マ...
市村暢央ソムリエが発掘、「ワカヌイ」の隠れたニュージーランドワイン
- 2016/08/02
- 01:51

ソムリエにも色々なタイプがある。コンクールを目指す禁欲タイプ、客を楽しませるエンターテイナー、メディアに登場するスター……フレンチの3つ星「カンテサンス」を支えたシェフソムリエ市村暢央さんは、私が最もサービスを受けたいソムリエだ。料理とワインのち密な知識に基づいて、ミリ単位の正確なペアリングを披露する。現場に立ったら、日本で一、二を争う安定感があり、信頼している。副業には脇目をふらず、接客に集中し...
北海道ケルナーの可能性、自然派のタキザワワイナリー
- 2016/08/01
- 00:39

梅雨のない北海道のワイン産地としての可能性は、世界の専門家が評価している。ジャンシス・ロビンソンとジュリア・ハーディングMWの「ワイン・グレープス」も、ケルナーから「驚くほどよいワイン」が出来ると指摘している。それをタキザワワイナリーのワインで実感した。 大橋健一MWと出かけた恵比寿の和食屋さんで飲んだ。「タキザワワイナリー ケルナー 2013」は透明感のある酸、新緑、青リンゴ、レモンドロップ、リースリ...
マスター・ソムリエの技量、ロスト&ファウンドのピノ・ノワール
- 2016/07/31
- 09:53

忘れ物預かり所。覚えやすい名前を持つこのワインには、忘れられない思い出がある。3年前に参加した「カリフォルニア・ワインサミット」で、このワインとクッチのピノ・ノワールに出会って、カリフォルニアの新潮流を初めて実感した。 その時は元サンフランシスコ・クロニクル編集長のジョン・ボネのセミナーも聞いた。彼が選んだ「次世代の造り手」の1人がボネだった。ボネがそれからほどなく刊行した「ニュー・カリフォルニア...
進化続ける超タスカン、オルネッライア2013
- 2016/07/27
- 02:42

ボルゲリから多くのスーパータスカンが生まれた。着実に進化を続けているのは、テヌータ・デッル・オルネッライアだけではないか。ほかの生産者は気まぐれなイタリア気質を残すが、オルネッライアは国際的だ。醸造も、ワイナリー運営も、マーケティングも。わかりやすく言えば、ボルドーのトップシャトーと変わらない。 カリフォルニアワインの父アンドレ・チェリチェフ、世界のミシェル・ロランらトップコンサルタントを雇い、...
冷涼気候のタスマニア、シャブリ連想させるダルリンプルのシャルドネ
- 2016/07/24
- 00:56

冷涼な産地を探す動きの盛んなオーストラリアで、注目の産地がタスマニア島だ。ハウス・オブ・アラス、クローバー・ヒル、ジャンツなど優れたスパークリングワインを産する。ペンフォールドのヤッターナ・シャルドネはタスマニアのブドウを増やし、アデレード・ヒルズに拠点を置くショウ&スミスもトルパドル・ヴィンヤードを取得した。 生育期の平均気温14.4度はシャンパーニュとほぼ同じ。南緯41.5度はニュージーランドのマー...