熟成感とフレッシュ感のバランス、ランソンのヴィンテージ・コレクション
- 2015/12/27
- 00:53
リリー・ボランジェが編み出したRD(レッサンマン・デゴルジュ)は、ドン・ペリニヨンを筆頭とするキュヴェ・プレスティージュに対抗して1961年に50年代のものを世に出した。ボランジェはすべてがプレスティージュと考えていたマダムは、特別なキュヴェを仕込む必要はないと考え、熟成中の50年代をオリ抜きして発売した。2つの新しい流れが生まれた。オリと共に長期熟成したボトルを商品化すること。熟成の恩恵を生かして、ドザージュを少なくすること。シャンパーニュは発売されたらすぐ飲むべきという考えを変えた。70年代以前は、熟成したシャンパーニュの人気は低かったのだ。

ランソンのヴィンテージ・コレクションのようなキュヴェが出るようになったのも、リリーのおかげかもしれない。先行していた欧米市場ではすぐに売り切れたが、日本でもようやく発売された。ヴィンテージは1990、1988、1976。マグナム瓶のみを、注文を受けてデゴルジュマンして蔵出しする。オーダーメイドなシャンパーニュだ。ブレンドはピノ・ノワールとシャルドネがほぼ半々。デゴルジュマンは2015年の9、10月。リットル当たりのドザージュは5グラム。

1990は太陽の年。黄桃、アプリコット、焼きリンゴ。1990は熟しすぎたシャンパーニュも多いが、ランソンはチョーキーなミネラル感をしっかり残して、酸とのバランスを保っている。オリに由来する硬質なタッチと熟した黄色の果実のハーモニーが心地よい。10年以上は進化するだろう。1988はリンゴ酸の多かった長期熟成タイプのヴィンテージ。クリュッグが1988を1989の後に発売したことでもわかる。白トリュフ、マジパン、石灰岩を砕いた香り。タイトで、輪郭はシャープで明確。フレッシュさが際立っている。ノンマロのフレッシュ感を押し出したランソンの持ち味が堪能できる。

1976もまた乾燥して日照に恵まれた年だが、新鮮な酸を予想以上に残していた。53%を占めるシャルドネのおかげだ。1年半前と印象が変わらない。フランボワーズ、カマンベールの皮、カモミーユ、モカ。きめ細かな酸とミネラル感がきれいに調和し、熟成した香りがあるのに、パレットはフレッシュという偉大なシャンパーニュの方程式を満たしている。クリーミィな質感があり、塩っぽさを残す余韻。偉大な白ワインの領域に属する。

ヴィンテージ・コレクションは3度目の経験だが、いつ飲んでも、シャルドネ・ハウスらしいキレの良さと、樽を使わずに醸造するストレートでピュアな味わいが際立っている。価格は安くはないが、最低でも四半世紀を経ている熟成感と、じっくり楽しめるマグナムということを考えれば、ブルゴーニュやボルドーと比べても、高くはない。1990なら、スタンダードボトルにして5万円なのだから。大きめのグラスで白ワイン的に楽しめる。
メゾンの栄光を支えたジャン・ポール・ガンドン氏が引退し、若きエルヴェ・ダンタンの時代に入る。醸造設備の刷新を終え、大樽も導入して、チューニングを図っていく。見逃せないメゾンだ。
2015年11月16日 アサヒビールで
シャンパーニュ ランソン ヴィンテージ・コレクション 1990 マグナム
デゴルジュマン:2015年10月
95点
参考小売価格:10万300円
シャンパーニュ ランソン ヴィンテージ・コレクション 1988 マグナム
デゴルジュマン:2015年9月
94点
参考小売価格:11万6000円
シャンパーニュ ランソン ヴィンテージ・コレクション 1976 マグナム
デゴルジュマン:2015年10月
96点
参考小売価格:17万5000円
輸入元:アサヒビール

ランソンのヴィンテージ・コレクションのようなキュヴェが出るようになったのも、リリーのおかげかもしれない。先行していた欧米市場ではすぐに売り切れたが、日本でもようやく発売された。ヴィンテージは1990、1988、1976。マグナム瓶のみを、注文を受けてデゴルジュマンして蔵出しする。オーダーメイドなシャンパーニュだ。ブレンドはピノ・ノワールとシャルドネがほぼ半々。デゴルジュマンは2015年の9、10月。リットル当たりのドザージュは5グラム。

1990は太陽の年。黄桃、アプリコット、焼きリンゴ。1990は熟しすぎたシャンパーニュも多いが、ランソンはチョーキーなミネラル感をしっかり残して、酸とのバランスを保っている。オリに由来する硬質なタッチと熟した黄色の果実のハーモニーが心地よい。10年以上は進化するだろう。1988はリンゴ酸の多かった長期熟成タイプのヴィンテージ。クリュッグが1988を1989の後に発売したことでもわかる。白トリュフ、マジパン、石灰岩を砕いた香り。タイトで、輪郭はシャープで明確。フレッシュさが際立っている。ノンマロのフレッシュ感を押し出したランソンの持ち味が堪能できる。

1976もまた乾燥して日照に恵まれた年だが、新鮮な酸を予想以上に残していた。53%を占めるシャルドネのおかげだ。1年半前と印象が変わらない。フランボワーズ、カマンベールの皮、カモミーユ、モカ。きめ細かな酸とミネラル感がきれいに調和し、熟成した香りがあるのに、パレットはフレッシュという偉大なシャンパーニュの方程式を満たしている。クリーミィな質感があり、塩っぽさを残す余韻。偉大な白ワインの領域に属する。

ヴィンテージ・コレクションは3度目の経験だが、いつ飲んでも、シャルドネ・ハウスらしいキレの良さと、樽を使わずに醸造するストレートでピュアな味わいが際立っている。価格は安くはないが、最低でも四半世紀を経ている熟成感と、じっくり楽しめるマグナムということを考えれば、ブルゴーニュやボルドーと比べても、高くはない。1990なら、スタンダードボトルにして5万円なのだから。大きめのグラスで白ワイン的に楽しめる。
メゾンの栄光を支えたジャン・ポール・ガンドン氏が引退し、若きエルヴェ・ダンタンの時代に入る。醸造設備の刷新を終え、大樽も導入して、チューニングを図っていく。見逃せないメゾンだ。
2015年11月16日 アサヒビールで
シャンパーニュ ランソン ヴィンテージ・コレクション 1990 マグナム
デゴルジュマン:2015年10月
95点
参考小売価格:10万300円
シャンパーニュ ランソン ヴィンテージ・コレクション 1988 マグナム
デゴルジュマン:2015年9月
94点
参考小売価格:11万6000円
シャンパーニュ ランソン ヴィンテージ・コレクション 1976 マグナム
デゴルジュマン:2015年10月
96点
参考小売価格:17万5000円
輸入元:アサヒビール
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