南アのカルト「コルメラ」、進化示す12VTの垂直試飲会
- 2014/05/15
- 00:43
南アフリカ・スワートランドで世界の注目を集めるイーベン・サディ氏が来日し、13日、カルトワイン「コルメラ」がデビューした2000年からの歩みを振り返る12ヴィンテージの垂直試飲会を開いた。

サディはサーファーを経て、10代からドイツ、オーストリア、ブルゴーニュなど世界の産地で修業し、「スパイス・ルート」で初代醸造責任者を務めた後、1998年にサディ・ファミリー・ワインズを設立。南ア西部のスワートランドで、フランス品種から造る赤のコルメラと白のパラディスはすぐに、英国のジャンシス・ロビンソンMWら世界の評論家の注目を集めた。ジョイント・ベンチャーでセキーロ・ワイナリーを設立し、スペインでテロワール・アル・リミットのプロジェクトも手掛けた。輸出用バルクワインが6割を占める南アにあって、品質、価格ともにトップに位置する生産者だ。
垂直試飲会はロンドンでも開かれたが、アジアでは初めて。輸入元のワイナリー和泉屋が招へいし、東京・池袋の「エスペルト」で開いた。コルメラはローマ時代の農学者コルメラの自然を重視した哲学から影響を受けて名付けた。地中海性気候のスワートランドで有機栽培する8つの区画の約20ヘクタールのシラー、ムールヴェドル、グルナッシュから造られる。20人以上が粒単位で選果し、発酵はコンクリートか木製の大樽で行う。

「出身地のケープタウンから、国内最大のアペラシオンであるスワートランドに来たのは、広大な土地で、土壌も気候も多様性があり、古い樹が多かったから。基本は地中海気候だが、大西洋とインド洋の海流がぶつかり、海洋性気候の影響もある。花崗岩、粘板岩、砂石と3つの土壌がある。花崗岩はスパイシーで、ハーヴやコショーの香りと深いタンニンを与える。粘板岩は赤い果実の香りがあり、優雅で酸が高い。砂岩はアーシーで、革の香り、塩っぽいミネラル感がある。個別の畑ではなく、アペラシオン全体の表現をしようとしている」
2000年から2011年の12ヴィンテージの中で重要な変更点がいくつかある。一つは品種。2000年はシラー100%だったが、2001年からムールヴェドルを15~20%ブレンドするようになり、2009年と2010年はグルナッシュを2~3%ブレンド。2011年はシラー80%、ムールヴェドル20%に戻った。

「コート・ロティに代表されるシラーはスパイシーで、中間は充実しているが、複雑さがたりない。わずかにあるムールヴェドルの古木は複雑性を与えてくれる。スワートランドにはよいグルナッシュ、サンソーはなかったので、結局、シラーとムールヴェドルのブレンドになった」
樽の使い方も変わった。2000年はバリック新樽40%だったのが、2001年は80%に上がり、その後は60%前後で推移。熟成期間は24か月間だったが、2009年からはバリックの新樽比率を5~10%に減らした上で、最初にバリックで12か月間の熟成の後、フードルでさらに12か月寝かせるようになった。
「2001年に新樽比率を上げたのは凝縮してタニックだったから。今振り替えると、少なくて良かった。2009年からフードルを使うようになったのは、それまでのローヌやピエモンテから、ブルゴーニュを飲むようになったから。50年以上の古木にフランスの新樽は合理的ではない。南アはボルドーとは違う。大陸性気候はバリックがいいが、地中海性気候にはフードルが合っている」
試飲すると、2000から2002年までは、品種も抽出も試行錯誤がうかがえる。2001年で複雑性とスケールが大きくなった。2002年はち密なタンニンとエレガントな味わいが印象的。
「2000年はガレージに寝泊まりして造った。いまだにフレッシュ。2001年は乾燥した年で凝縮している。2002年は雨が多くて冷涼。大陸的な冷涼さがあった。抽出せずとも、エレガントでも熟成することをこの年から学んだ」
猛暑の2003年を経験し、2004年から2008年まではスタイルの一貫性が出てきた。2005年から2008年までは収量もヘクタール当たり10~19ヘクトリットルで安定。フィネスとバランスが際立ってきた。2004年はタンニンと果実のバランスがいい。2005年は巨大なスケール。2006年は突出しているところがなく、タンニンがきれいに統合されている。2007年は構造がしっかりし、2008年はアルコール度が14・6%と高いものの、バランスはとれている。
「2004年は古典的なヴィンテージ。2005年は最初の6年で最高のヴィンテージ。10年たっても好きだ。2006年は2004年に似ている。2007年は2003年のように暑く、収穫期間に45度に達する日が6日もあった。発売直後はタニックで、硬かったが、7年たってバランスがいい。2008年は最初からバランスがよく、すぐ売り消れた」
2009年は大きな転換点だ。抽出が優しくなり、タンニンも柔らかい。ミンティで、ピノ・ノワールを思わせるオレンジの皮の香り。引き締まっている。アルコール度も14・1%まで下がった。全房発酵を導入した。
「2009年から考えを変えた。樽や品種だけでなく、ピジャージュも1日2回から、1日に1回か、5日に1回に変えた。コーヒー豆を抽出するのではなく、お茶を煎じるような感じだ。収穫を1週間早めて、アルコール度を14%以下に抑えるようにした。アルコール度が低いと、香りもフレッシュに感じる」

2010年と2011年はさらに、果実のピュアさとフレッシュさを追求する方向を推し進めている。
「2010年は私にとって完璧なヴィンテージ。収穫前に完璧な雨 が降って、自分の求めるすばらしい要素がいろいろ入っている。2011年は乾燥した年だが、酸のレベルが高くフレッシュ。開けて1週間たつと複雑さが増す」
平均収量がヘクタール当たり20ヘクトリットルを切るコルメラの生産量は十数樽と少ない。ワイナリー全体でも4万8000本。醸造面で試行錯誤を繰り返しながら、抽出、アルコール度などの面で、洗練されたエレガントなスタイルに進化したことがよくわかった。
「28歳で最初のヴィンテージを造り、10年以上かけてここまできた。すべてのプロセスで理想を求めるので、これ以上生産量は増やさない。サーフィンする時間も欲しいから(笑)」
問い合わせはワイナリー和泉屋(03・3963・3217)。

サディはサーファーを経て、10代からドイツ、オーストリア、ブルゴーニュなど世界の産地で修業し、「スパイス・ルート」で初代醸造責任者を務めた後、1998年にサディ・ファミリー・ワインズを設立。南ア西部のスワートランドで、フランス品種から造る赤のコルメラと白のパラディスはすぐに、英国のジャンシス・ロビンソンMWら世界の評論家の注目を集めた。ジョイント・ベンチャーでセキーロ・ワイナリーを設立し、スペインでテロワール・アル・リミットのプロジェクトも手掛けた。輸出用バルクワインが6割を占める南アにあって、品質、価格ともにトップに位置する生産者だ。
垂直試飲会はロンドンでも開かれたが、アジアでは初めて。輸入元のワイナリー和泉屋が招へいし、東京・池袋の「エスペルト」で開いた。コルメラはローマ時代の農学者コルメラの自然を重視した哲学から影響を受けて名付けた。地中海性気候のスワートランドで有機栽培する8つの区画の約20ヘクタールのシラー、ムールヴェドル、グルナッシュから造られる。20人以上が粒単位で選果し、発酵はコンクリートか木製の大樽で行う。

「出身地のケープタウンから、国内最大のアペラシオンであるスワートランドに来たのは、広大な土地で、土壌も気候も多様性があり、古い樹が多かったから。基本は地中海気候だが、大西洋とインド洋の海流がぶつかり、海洋性気候の影響もある。花崗岩、粘板岩、砂石と3つの土壌がある。花崗岩はスパイシーで、ハーヴやコショーの香りと深いタンニンを与える。粘板岩は赤い果実の香りがあり、優雅で酸が高い。砂岩はアーシーで、革の香り、塩っぽいミネラル感がある。個別の畑ではなく、アペラシオン全体の表現をしようとしている」
2000年から2011年の12ヴィンテージの中で重要な変更点がいくつかある。一つは品種。2000年はシラー100%だったが、2001年からムールヴェドルを15~20%ブレンドするようになり、2009年と2010年はグルナッシュを2~3%ブレンド。2011年はシラー80%、ムールヴェドル20%に戻った。

「コート・ロティに代表されるシラーはスパイシーで、中間は充実しているが、複雑さがたりない。わずかにあるムールヴェドルの古木は複雑性を与えてくれる。スワートランドにはよいグルナッシュ、サンソーはなかったので、結局、シラーとムールヴェドルのブレンドになった」
樽の使い方も変わった。2000年はバリック新樽40%だったのが、2001年は80%に上がり、その後は60%前後で推移。熟成期間は24か月間だったが、2009年からはバリックの新樽比率を5~10%に減らした上で、最初にバリックで12か月間の熟成の後、フードルでさらに12か月寝かせるようになった。
「2001年に新樽比率を上げたのは凝縮してタニックだったから。今振り替えると、少なくて良かった。2009年からフードルを使うようになったのは、それまでのローヌやピエモンテから、ブルゴーニュを飲むようになったから。50年以上の古木にフランスの新樽は合理的ではない。南アはボルドーとは違う。大陸性気候はバリックがいいが、地中海性気候にはフードルが合っている」
試飲すると、2000から2002年までは、品種も抽出も試行錯誤がうかがえる。2001年で複雑性とスケールが大きくなった。2002年はち密なタンニンとエレガントな味わいが印象的。
「2000年はガレージに寝泊まりして造った。いまだにフレッシュ。2001年は乾燥した年で凝縮している。2002年は雨が多くて冷涼。大陸的な冷涼さがあった。抽出せずとも、エレガントでも熟成することをこの年から学んだ」
猛暑の2003年を経験し、2004年から2008年まではスタイルの一貫性が出てきた。2005年から2008年までは収量もヘクタール当たり10~19ヘクトリットルで安定。フィネスとバランスが際立ってきた。2004年はタンニンと果実のバランスがいい。2005年は巨大なスケール。2006年は突出しているところがなく、タンニンがきれいに統合されている。2007年は構造がしっかりし、2008年はアルコール度が14・6%と高いものの、バランスはとれている。
「2004年は古典的なヴィンテージ。2005年は最初の6年で最高のヴィンテージ。10年たっても好きだ。2006年は2004年に似ている。2007年は2003年のように暑く、収穫期間に45度に達する日が6日もあった。発売直後はタニックで、硬かったが、7年たってバランスがいい。2008年は最初からバランスがよく、すぐ売り消れた」
2009年は大きな転換点だ。抽出が優しくなり、タンニンも柔らかい。ミンティで、ピノ・ノワールを思わせるオレンジの皮の香り。引き締まっている。アルコール度も14・1%まで下がった。全房発酵を導入した。
「2009年から考えを変えた。樽や品種だけでなく、ピジャージュも1日2回から、1日に1回か、5日に1回に変えた。コーヒー豆を抽出するのではなく、お茶を煎じるような感じだ。収穫を1週間早めて、アルコール度を14%以下に抑えるようにした。アルコール度が低いと、香りもフレッシュに感じる」

2010年と2011年はさらに、果実のピュアさとフレッシュさを追求する方向を推し進めている。
「2010年は私にとって完璧なヴィンテージ。収穫前に完璧な雨 が降って、自分の求めるすばらしい要素がいろいろ入っている。2011年は乾燥した年だが、酸のレベルが高くフレッシュ。開けて1週間たつと複雑さが増す」
平均収量がヘクタール当たり20ヘクトリットルを切るコルメラの生産量は十数樽と少ない。ワイナリー全体でも4万8000本。醸造面で試行錯誤を繰り返しながら、抽出、アルコール度などの面で、洗練されたエレガントなスタイルに進化したことがよくわかった。
「28歳で最初のヴィンテージを造り、10年以上かけてここまできた。すべてのプロセスで理想を求めるので、これ以上生産量は増やさない。サーフィンする時間も欲しいから(笑)」
問い合わせはワイナリー和泉屋(03・3963・3217)。
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